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第13話 誰もいない岩風呂

Author: 天咲琴乃
last update Petsa ng paglalathala: 2026-08-10 22:05:41

――あの人を、信じないで。

湖の上に立つ白い葉月の唇が、確かにそう動いた。

「待って!」

いのりが湖へ駆け寄った瞬間。

ドンッ!

夜空に花火が上がった。

赤い光が湖面を染める。

いのりは思わず目を閉じた。

ほんの一瞬だった。

再び湖を見る。

「……いない」

白い葉月は消えていた。

湖には灯籠と星が浮かんでいるだけ。

「どうした?」

りひとが駆け寄る。

「また葉月さんがいたの」

「何て?」

いのりは迷った。

目の前では若い葉月が楽しそうに笑っている。

少し離れたところには巌。

――あの人を、信じないで。

「……巌さんを信じるなって」

りひとの表情が変わった。

「それ、本当に葉月さんだった?」

「え?」

「俺には何も見えなかった」

ぞくり。

夏なのに、腕に鳥肌が立った。

祭りを終え、二人はペンションへ戻った。

時刻は午後十時を過ぎている。

「お風呂、入ってくる」

「一人で大丈夫?」

「ペンションの中だよ」

そう笑ったものの、本当は少し怖かった。

岩造りの浴場には誰もいなかった。

大きな窓の向こうには森。

湯船から白い湯気が立ち上っている。

いのりは肩まで湯につかった。

「はぁ……」

よう
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